ほんといろいろ。

小説の感想とその他いろいろ(音楽、映画、壁紙...)愚考録

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

アトマン探求の旅。『インド夜想曲』アントニオ・タブッキ

失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公、彼の前に現われる幻想と瞑想に充ちた世界。インドの深層をなす事物や人物にふれる内面の旅行記とも言うべきこのミステリー仕立ての小説を読み進むうちに読者はインドの夜の帳の中に誘い込まれてしまう。イタ…

僕の弟子はお爺さん

「オレがもう少し若ければあなたの弟子になったのにな」 冗談だったかもしれない。しかし、そのお爺さんが僕のことを気に入ってくれている雰囲気はすでに感じ取っていたので、多分思いのほか本気の台詞なのではないかと僕は思った。なのでそれはなかなか、と…

輝ける愚行の穏やかな響き『ブルックリン・フォリーズ』ポールオースター

つまり、草野正宗氏の言葉をお借りするならば、 くだらない話で安らげる僕らは その愚かさこそが何よりも宝物 (「愛の言葉」より) ということなのだ。 傷ついた犬のように、私は生まれた場所へと這い戻ってきた──一人で静かに人生を振り返ろうと思っていたネ…

『ミスター・ヴァーティゴ』ポールオースター

いつから無心で信じるということができなくなったのだろうか。 「私と一緒に来たら、空を飛べるようにしてやるぞ」ペテン師なのか?超人なのか?そう語る「師匠」に出会ったとき少年はまだ9歳だった。両親なし、教養なし、素行悪し。超然とした師匠の、一風変…