ほんといろいろ。

小説の感想とその他いろいろ(音楽、映画、壁紙...)愚考録

「iri」の歌声を聴き、言葉で踊る

言葉は音楽である。

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僕は自分の声に少しコンプレックスがある。聞き取りづらい妙にくぐもった声で、自分なりに相手が聞き取りやすいようにハッキリと発声したつもりでも、聞き返されることが非常に多い。たまに、声の出し方がわからないときさえもある。笑。まあ、特にコミュニケーション能力を必要としない仕事(だいたい壁と会話する)をしているし、そもそも人と会話することも少ないのでそれほど困ってはいないけれども、とは言え気にしていないということではない。

コンプレックスが武器になる、という話はよく耳にするけれども、近頃このブログによく登場するシンガーソングライターのiri(イリ)も、小さい頃は自分の声がコンプレックスであったと、とあるインタビューで語っていた。あの非常に魅力的な歌声の持ち主が。まさに「コンプレックスが武器」、それも最強の武器になったということである。

僕自身は声を武器にするつもりは毛頭ないけれども、しかしそれを成し遂げたiriを応援しない理由はない。近頃のこのブログへの彼女の頻出は、つまりそういうことである。

というのは建前で、単に一聴した瞬間に、「うわっ、この声好き」という「一耳惚れ」だったのだけれど。ホントいい声。


声は持って生まれたものだとして、逆に後天的に備わったもの(多分)としては、彼女の非凡な言語感覚というものがある。聴いてみるとわかるけれど、彼女はきっとハーフ(声質もそう感じさせるかもしれない)、もしくは帰国子女、バイリンガル、インターナショナルスクール出身、少なくともそれなりの期間海外に滞在していたのだろうという感想を抱くに違いない。しかし、彼女はほんの短い期間、N.Yに留学した経験があるというだけらしい。

それでいて、あの日本語と英語を混在させた歌詞とその淀みないflowの心地良さは非凡。その歌詞と、低く響き少しくぐもったiriの声がうまく作用しあい、絶妙なバランスで、二つの異なる言語があたかも一つの共通言語のように聴こえる。そこに壁は無いのである。ありのままを受け入れ、なにものにも縛られず自由に虚空の未来へ向かう彼女のように、言葉自体も囚われるものはなく自由なのだ。

想定外のtroubleが招いてくチャンスを
重ねていく最後を笑っていたいんだ君と
透明な世界を恐れないでいたいの
元へ戻れなんて望みなんてない
(wonderland)

Wonderland

Wonderland

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  • provided courtesy of iTunes


『shade』という3rdアルバムを、僕は最初に聴いた(オヤジだから知るのが遅い)のだけれど、このアルバムだけを聴くと、とても強い女性像(勿論弱さを内包していながらの)をイメージする。けれど、2nd『juice』から1st『groove it』と掘り下げて聴いていくと、特に1stアルバムの中に存在するのは(「半疑じゃない」から「ナイトグルーヴ」あたり特に)とても可愛らしい「女の子」という感じで、アルバムごとに大人になっていく様子は、きっと世の女性方にもなにか響くところがあるのではないかと思う(是非1stから順に)。そして僕らオヤジ世代(と言っても一回りほどの差だけれど)はそれを親目線で感じて感慨にふける。笑。1stと3rdのギャップがまるで我が子の成長のように感じさせるのだ(既婚子なし男の意見)。

だから言ってしまえば、老若男女どの世代にも何かしら心に響くものがある(かもしれない)、それがiriの作品なのである。まあ、恋愛に関する詞が多いので、同世代の女性に特に伝わりやすいだろうけれど。でも捉えようである。様々な捉え方ができるというのも、iriの詞の美点なのだ。


また、バックアップするトラックメイカー陣もなかなかのメンツである。これまたこのブログに度々登場するkan sanoも3rdアルバム『shade』の中の2曲でトラックを提供している。そのほかも、大沢伸一(!!)やら「水曜日のカンパネラ」のケンモチヒデフミやらtofubeatsやらmabanuaにgrooveman spotまで(グルスポさんに昔DJいいねって言われたのがちょっとした自慢)。そうそうたるメンツ。

まあこの辺はまた別の機会に書きたいと思う。


ということで、思いつくままつらつらと書いてきたけれど、そんな僕のくだらない「行き場のない言葉はいらない(「night dream」の歌詞)」のであって、とにかく聴いてみればいいじゃんというだけのことである。

iriの持つ魅力的な歌声と、彼女の「行き場のある言葉」は音楽となって、きっとあなたの心に響くだろう。

他人なんか気にせず、とりあえず踊ろうよ。iriの言葉と、音楽と。

とかなんとか。

深夜東京ダンスホール 光見つめわたしは踊る
脳内胴体リズム体 これが私と叫びたい
笑われたって嫌じゃない 飽きられるほど踊りたい
私は私で意義がある 言葉にならない意義がある
(半疑じゃない)

半疑じゃない

半疑じゃない

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Groove it

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